薬科ブログ日々の学校生活を紹介する学校ブロクです。
学校だより 令和8年6月号
2026年05月26日
中学
高校
―初心を思い出すこと―
教頭 座波正和
新年度が始まり、校内には新しい空気が満ちている。新入生の姿を見るたびに、私自身も初心に立ち返る思いになる。皆さんは、本校に入学した日のことを覚えているであろうか。新しい制服に袖を通した日の緊張感、期待と不安が入り混じった気持ち、これから始まる学校生活への希望。誰にとっても、その時の思いはかけがえのない初心であったはずである。今回は「初心を思い出すこと」をテーマに、その大切さについて考えてみたい。
私は、本校に赴任して今年で40年になる。3月には理事長より永年勤続表彰をいただいた。身に余る光栄であると同時に、これまで支えてくださった多くの方々への感謝の気持ちでいっぱいである。教頭としての任期も残り2年となり、これまでの年月を振り返る機会が増えた。そして私自身も、教員になった頃、どのような教師になりたかったのかをあらためて思い返している。
私が赴任した年は、附属中学校が開校し、中学1期生(高校16期生)を迎えた節目の年であった。また、高校には13期生が入学した。当時の大学入試結果は、国公立大学合格者49名、そのうち医学部医学科合格者は8名であった。赴任2年目には京都大学への初の合格者、5年目には東京大学への初の合格者が誕生し、学校全体が大きな喜びに包まれたことを今でも覚えている。
今年度までに国公立大学医学部医学科合格者は累計1300名を超え、東京大学118名、京都大学89名という実績に至った。これらの数字は一朝一夕で成し遂げられたものではない。生徒たちの日々の努力、先生方の熱心な指導、保護者の皆様の支え、卒業生の協力、その積み重ねが実を結んだ結果である。学校の伝統とは、このような日々の歩みの中で築かれていくものだと感じている。
しかし、学校の価値は進学実績だけで測れるものではない。私がこの40年間で何より大切にしてきたことは、生徒一人ひとりに向き合うことである。学力や成績だけでなく、それぞれの悩みや個性、可能性に目を向け、一人の人間として接することを心掛けてきた。励ましが必要な時もあれば、厳しく背中を押す時もある。生徒によって必要な関わり方は異なる。その積み重ねこそ教育の本質であると信じている。
私が大切にしている言葉に「一期一会」がある。一つ一つの出会いを一生に一度のものとして大切にするという意味である。毎年異なる生徒たちと出会い、その時にしかない時間を共に過ごせることは、教育に携わる者にとって大きな喜びである。そして私自身、多くの薬科生との出会いの中で学び、育てられてきた。
よく「初心を忘れないことが大切」と言われる。しかし私は、「忘れない」ではなく、「思い出すこと」が大切だと思っている。人は日々忙しく過ごす中で、最初の志や目標を忘れてしまうものである。それは誰にでもある自然なことである。だからこそ、たまに立ち止まり、自分がなぜ本校を志望したのか、どのような自分になりたかったのかを思い出してほしい。初心を思い出すことは、今の自分を見つめ直し、次の一歩を踏み出す力になる。私自身もまた、どのような教員でありたいのかを問い直しながら歩んできた。
今こそ、それぞれが自分の初心を確認する時である。学習、部活動、人間関係、将来の夢――どんなことでも構わない。入学した日の気持ちを思い出し、新たな一歩を踏み出してほしい。皆さん一人ひとりの歩みが、新たな薬科の歴史をつくっていくことを期待している。
