薬科ブログ日々の学校生活を紹介する学校ブロクです。
学校だより 令和8年4月号
2026年04月09日
中学
高校
「ある中古車屋の社訓との出会い」
校長 冨里 一公
恥ずかしながら若い時からこの歳になるまで新車を買って乗ったことは一度もない。確かに、貧乏教師で新車を購入できる身分でもなかったので当然と言えば当然である。免許を取って以来、乗っているのは毎回、何万キロも走破した型落ちの中古車である。そんな中古車しか買えない貧乏な私にも貧乏なりのポリシーがある。それは中古車を買うのは必ず中部地区のとある某中古車屋と決めている。そんなことポリシーになるのかどうかも疑わしいが私は勝手にそう思っている。なぜ、私がそこまでその某中古車屋にこだわるのか、実は今から 30 数年前、古くなった自家用車を買い換えるために中古車屋巡りをしていた際に偶然、その中古車屋に辿り着いた。そして、その中古車屋の事務所の壁に掲げてあった「社訓」に私は心を動かされた、というかある意味衝撃を受けた。その社訓には、「できないという発想ではなく、できるという発想から取り組もう」と書いてあったのである。私は、その「社訓」を見た瞬間、我が身を振り返って恥ずかしくなった。なぜならば当時、教員として駆け出しだった私は「社訓」とは反対の「できない」という発想で日々の教育活動に取り組んでいたからである。
26 歳で中部地区の高校に採用された私は、教科指導に関しても自分の特技であるはずのバドミントン部の指導についても、何かにつけてネガティブ思考でできるわけがないという後ろ向きの発想で授業も生徒への対応もしていたような気がする。しかし、その「社訓」を見て自分自身の教育観を、引いては生き方そのものを深く考えさせられたのである。それ以来、仕事ではどんなに難しい局面におかれてもまずはどうにかできる方法はないか?バドミントンの指導では生徒のこの強みを前面に出せば弱点を少しでもカバーできるのではないか?というように「できないという発想ではなく、できるという発想から取り組もう」を心がけてきた。その後の教員人生が順調にキャリアアップできたのも某中古車会社の事務所の壁に掛かっていた「社訓」のお陰様である。
日々、朝の校門立哨で薬科生を見ていると学ぶことに意欲を失い、それとともに成績も下降し、まるで何かの抜け殻のように登校してくる生徒をよく見かける。確かに、本校での授業のスピードやレベルの高さについて行けず自己肯定感も低くなっていく気持ちも理解できる。でもそのような生徒に私はあえて前述の「社訓」の言葉を言いたい。学習への意欲も湧かず、未来への希望も見えない今だからこそ、どうせ自分には「できない」という発想ではなく、自分にも「できる」という発想で来る 4 月からの新学期をスタートしてほしいと切に願いたいのである。
禅語に『前後際断』という言葉がある。過去も未来も断ち切って、今、この瞬間を大切に精一杯生きる。それが前を向いて生きるということであるという意味である。人間には自分が置かれている状況に対してどのような態度を取るのか、という究極の自由が与えられているはずだ。学習への意欲も湧かず成績も下降気味、そのような状況にどのような態度を取るのか、そこに人間としての価値や存在意義が隠されているのではないだろうか。
全薬科生たちよ!4 月からの学校生活に向けて、今こそ『前後際断』の言葉通り、過去は過去、できないという発想ではなく、できるという発想から取り組んでいただくことを校長として心から願っている。さあ Let’s Go!
